店舗事務所の賃貸借の中途解約と残存期間賃料を違約金とする特約は有効?

事業用建物賃貸借契約においては、相手方が賃貸借契約に違反した場合、違約金を定めることがよく行われています。



たとえば契約に違反して解除された場合には「家賃の6か月分の違約金を支払え」などです。


民法では、契約当事者が違反した場合に相手方に対して損害賠償請求する場合に備えて、損害賠償額を予定することについて規定しています。



民法第420条第1項
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所はその額を増減することができない。




損害賠償の予定とは、相手方が契約に違反したとしても、損害賠償請求をするためには

・相手方の契約違反によって損害が発生した事実

・その損害額がいくらか

について立証しなければ損害賠償請求は認められないため、これらの事実を立証しなくとも、速やかに損害賠償が行われるようにするために契約で予め契約違反があった場合の損害賠償の額を予定するという制度です。



損害賠償の予定がなされれば、契約違反をされた相手方当事者は契約違反があったという事実さえ明らかにすれば、その契約違反によって実際に損害が生じたか否か、また、その契約違反によって実際にいくらの損害が発生したかを立証することなく、予定した賠償額を相手方に請求することができます。



また、契約違反をした側が、相手方に生じた損害額が予定した額を下回っていた事実を立証したとしても、賠償額の予定は減額されません。


これは、契約自由の原則を具現化した規定であると考えられており、その故に民法第420条第1頂では


「この場合において、裁判所はその額を増減することができない」


と定められ、当事者の合意に委ねる旨が規定されています。


これに対し、契約書に用いられる違約金にはいくつかの種類があり、損害賠償の予定であるものもあれば、違約金は契約違反に対するペナルティの意味を持つものであって、損害賠償は違約金とは別個に請求できるとするものなどがあります。



但し、民法第420条第3項は「違約金は賠償額の予定と推定する」と定めていますので、違約金は、それが賠償額の予定とは異なるものであることの反証がなされない限り、賠償額の予定として扱われることになります。




残存期間賃料相当額を違約金とする特約
 
建物賃貸借契約において、契約違反により契約が終了した場合に、残存期間の賃料相当額の違約金を支払うとの条項が定められることがありますが、この条項が損害賠償額の予定であるとすれば、当事者間の合意自体は有効ですが、民法上このような「残存期間の賃料相当額を違約金として支払え」との特約は原則として無効と判断されているのです。




民法第420条では「裁判所はその額を増減することができない」と定められているのですから、裁判所がこの特約を否定できるのかと思われるかもしれませんが、裁判所は、このような残存期間賃料相当額を違約金とする特約は公序良俗に違反するため無効であると解しているのです。




残存期間の賃料相当簸を違約金とする条項と公序良俗違反

裁判所の考え方は、残存期間の賃料相当額を違約金とする特約は賃借人の「解約の自由を極端に制限する」特約であるから、公序良俗違反であるとするものです。



東京地方裁判所(平成8年8月22日)判決では、賃貸人と賃借人との問で4年間の賃貸借契約を締結するにあたり、賃借人が保証金を一括では支払えないため分割払いを希望し、賃貸人は分割払いを受け入れる代わりに、途中解約した場合は残存期間の賃料は違約金として没収するとの条件で賃貸借契約を締結したところ、賃借人は賃貸借契約を締結してから間もなく賃料が支払えず、賃貸借契約を期間内解約したという事案で、残存期間賃料相当額の違約金を支払うとの特約がなされていた事案について、次のように判断しています。


「当該賃貸借契約においては、解約に至った原因が賃借人側にあること、賃借人側に有利な異例の契約内容であること、という事情があるが、こうした事情を考慮してもなお、約3年2か月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制限することになるから、その効力を全面的に認めることはできず、解約時から1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効と解する」


というものです。


 もっとも、賃貸借契約の中には契約期間内は解約ができないとする契約もありますので、その場合には賃借人は契約期間中は解約できず、契約の全期間の賃料を支払う義務を負っているのですから、解約した場合には残存期間の賃料を支払わせても、公序良俗違反というほどの問題ではないのではないか・・との疑問をもたれるかもしれません。



確かに、解約できないとの契約も解約した場合には残存期間賃料相当額を支払うとの契約も、賃借人が支払うのは全契約期間の賃料という点では同じですが、両者は全く異なります。



それは解約できないとの契約は全期間を通じて賃貸人が取得するのは全期間の賃料のみです。


これに対し解約した場合に残存期間賃料を支払わせる特約の場合は、解約後は賃貸人は当該物件を別のテナントに賃貸して賃料を得ることができますので、その場合には賃貸人は全期間の賃料を得た上で、さらに次のテナントから得られる賃料を含め、賃料の二重取りが許容されることとなってしまいます。


このため、判例では賃貸借契約における期間内解約の違約金は、解約後次のテナントが入居するまでの相当期間分の賃料とすべきであり、その相当期間として6か月~1年分と解されているのです。











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カテゴリ:賃貸

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