法律行為と意思能力 民法第三条の二の新設

今度の民法改正で、第三条の二  

意思能力が新設されました。

これはは2020年4月1日の施行が決まっています。


戦後の親族、相続編の全部改正以来ですが、第二編物権は後日に委ねられ第三編債権を中心とする改正です。


その中で、意思能力を欠く法律行為は無効の法理を明文化し



「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする」



とされています。


高齢化社会を迎え、高齢者が法律行為の意思表示をしたとき意思能力に疑義があるときは明文によって適切な対処を諮る意図です。


気軽に「おカアさ~ん、ここハンコ押しときまっせ~」などとやるとえらい事になる可能性があるという事例です。



以下意思能力が争点となった最近の判例を検討しましょう。



広島地裁平成27年11月18日判決 広島高裁平成28年12月1日判決



広島県所在の株式会社A(代表取締役長男)は新規事業として近県での不動産開発を立案し、銀行に3億円の融資を申請しました。


銀行はA社の年商が6,000万円であるのに融資希望額がその5倍に当たること及び開発対象不動産では担保不足であること等を理由に融資を謝絶。


その後自分の親族が担保を提供するとの申し出があり、銀行が再度稟議し、ようやく融資が承認されました。


銀行支店に長男、その妻、その長男(孫)が集合し、長男と妻がA社の債務を極度額4億円の限度で連帯保証し、次いで妻と孫がその所有不動産に極度額3億円の根抵当権を設定する契約書に署名押印。



同日午後1時頃、二女が同支店を訪れ、同支店の窓口に1,000万円の定期預金を預け入れ、次いで同女は長男、その妻、孫、支店融資係、司法書士が待機する支店応接室に案内され、同女は銀行のA社に対する融資極度額3億円の限度で連帯保証をなし、同女と母親が持分各2分の1の割合で共有し且つ居住する建物(以下本件建物)に極度額3億円の根抵当権を設定するための保証約定書、定期預金の担保差入書根抵当権設定契約書に署名押印しました。



 
同日午後2時過ぎ、長男、支店融資係、司法書士が本件建物を訪れ、二女の案内でリビングルームに通され、隣室で寝ていた母親(91歳、寝たきり状態)がリビングルームのテーブルまで運ばれ、支店融資係が母親こ根抵当権設定契約書、内容確認書、個人情報利用同意書を示して説明し、母親がこれらの書面に署名押印し、次に、司法書士が母親こ根抵当権設定登記の登記委任状を示し母親が委任状に署名押印。



翌31日銀行はA社に3億円の融資を実行しました。



A社は平成23年末頃より融資の返済を滞る状態に陥り、広島地裁は同24年11月15日、銀行の申立で本件建物の競売開始を決定。



他方、同24年10月31日、二女は家裁に母親の後見開始を申し立て、同家裁は同年11月27日母親につき後見開始の審判をし後見人を選任しました。



同25年3月、母親は後見人を介して地裁に本件根抵当権の実行禁止及び競売手続停止の仮処分を申し立て地裁は同年4月19日、同仮処分を決定。



次いで母親は本案として、本件建物に為された根抵当権設定登記の抹消登記手続を提訴。




請求の原因は、母親は根抵当権を設定する意思能力はなかった旨の主張です。



母親の介護保険の要介護認定が時系列で要介護3~4でした。



介護保険主治医意見書によれば、日常生活自立度はIIb、(日常の意思決定の認知能力は見守りが必要、自分の意思の伝達能力は具体的要求に限られる)状態であり、後半は日常生活自立度はⅣ、(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする)状態でした。



銀行は



「支店融資係は母親に根抵当権の説明をし、同人の了解を得て契約書に署名してもらった。本件契約書は真正に成立した」



と反論。


しかし裁判では、銀行の融資係はきちんと当時の症状に見合った説明をしていない。


しかも母親と会話自体していない、と抹消登記を命じる判決を下しました。

(銀行は控訴しましたが高裁でも同様の判決)



これだけを読むと銀行も3億円イカれて少し気の毒な気もしますが、今後裁判ではなく民法で明文化され、きっちりと規定されることになったのです。



これは銀行融資に限らず、今後高齢社会の中、どの業界でも他山の石として注意しなければなりません。









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