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不動産コンサルティングで気を付けたい事例 立ち退き交渉

最近公認不動産コンサルティングマスターの方が増えていますが、気を付けたい事例です。


仲介会社売主から依頼を受け、本件建物から入居者を退去させることを内容とするコンサルティングを行うこととしました。


業者は交渉を重ねた結果、入居者に立退料として200万円を支払うことで、本件建物から退去する旨の合意を取り付けました。


平成23年2月2日、売主は仲介会社との間で、本件土地及び建物の売買の媒介を仲介会社に依頼する旨の専属専任媒介契約を締結し、同月10日、仲介会社の媒介により、買主との間で、代金2,150万円で本件土地及び建物の売買契約を締結し、買主から手付金200万円を受領しました。


平成23年3月6日頃、居住者とその家族は、建物から退去し、同10日、買主は、本件土地及び建物の引き渡しを受けました。


平成23年3月23日、売主の取り分975万円から本件土地及び建物の売却に要した費用を差し引く旨の説明を受け、翌日、その差額が売主の口座に送金されました。


しかし、費用の内訳を見てみると、仲介会社へのコンサルティング料203万円、担当者への謝礼金50万円が含まれていました。


これらの費用に疑問を感じた売主は、弁護士に相談をしました。


平成24年3月5日、弁護士は、仲介会社に対し、コンサルティング料等を受領する法的根拠等について説明を求めましたが、返答はありませんでした。


そこで、平成24年4月12日、売主は仲介会社が本件土地及び建物から居住者とその家族を退去させるコンサルティング業務を行い、その報酬としてコンサルティング料や謝礼金を受け取ることは、弁護士法第72条に違反するものであり、売主に対する不法行為にあたるとして、仲介会社らに対し、既に支払ったコンサルティング料等について、損害賠償を求める訴訟を提起しました。


これに対し、仲介会社は、コンサルティング料等の支払いは、合意に基づくものであり、弁護士法に違反するものではない。などとして反論しました。


裁判所は、「仲介会社が、売主との間で、本件建物から居住者Bを退去させることを内容とするコンサルティング契約をし、その後、仲介会社の代表者から指示を受けた担当者が、居住者との間で交渉を重ね、売主から立退料として200万円を受け取ることで本件建物から退去する旨の合意を取り付けることは、不動産の明け渡しという法律事件に関して法律事務を行うことにほかならない。」


また、「仲介会社が、本件のほかにも、仲介物件に賃借人がいる場合に立退交渉を行うことがあり、立退交渉が成功した場合には依頼者から「お世話料」という名目で報酬を受け取っている。」


等の事実を認定しました。


そのうえで、仲介会社による本件のコンサルティング契約及び同契約に基づく交渉等は、報酬を得る目的で、法律事件に関して法律事務を取り扱うことを業とするものであるから、強行法規である弁護士法第72条に違反すると判断しました。


さらに、裁判所は、仲介会社が取得したコンサルティング料203万円については、その全てが公序良俗に反する本件コンサルティング契約に基づく報酬というべきであり、仲介会社が売主からコンサルティング料203万円を取得したことについては、仲介会社の代表者に不法行為が成立し、仲介会社自体も会社法第350条により不法行為責任を負うと判断しました。


また、担当者が取得した謝礼金については、公序良俗に違反する本件のコンサルティング契約に基づいて行った業務に対する報酬にほかならないから、謝礼金50万円を取得したことについても、売主に対する不法行為が成立すると判断しました。


加えて、本件土地及び建物の売却に関する業務は、担当者と代表者及び会社が一体となって不法行為を行ったというべきであるから、共同不法行為が成立し、仲介会社も会社法350条により共同不法行
為責任を負うと判断しました。


なお、売主は、平成23年3月23日、担当者からコンサルティング料の説明を受けた際に異議を述べていませでしたが、裁判所は、そもそも本件のコンサルティング契約は公序良俗に違反する無効なものであるから、コンサルティング料や謝礼金の負担を了承したからといって不法行為の成立が否定されるものではないと判断しています。


裁判所は、コンサルティング料203万円、謝礼金50万円の全額を、売主の損害であると判断し共同不法行為の成立が認められるため、損害額の総額について、仲介会社と代表者、担当者が連帯して賠償責任を負うこととされました。




弁護士法第72条の趣旨

弁護士法第72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

と規定されており、法律が認めている場合以外に、非弁護士が法律事務の取扱い等をすることを禁止しています。



【弁護士法第 72 条の趣旨】
当事者その他の関係人の利益を守り、国民の公正かつ円滑な法律生活を維持し、法律秩序を維持確立することにあります。

弁護士法第72条の要件は、
①弁護士または弁護士法人でないものが、
②法定の除外事由もないのに、
③業として、
④報酬を得る目的で、
⑤一般の法律事件に関する法律事務の取り扱いまたは一般の法律事務の取り扱いの周旋
をすること。



業として、といえるためには、反復継続の意思が認められれば足り、具体的になされた行為の多少は問わないとされています。

また、④報酬を得る目的という主観的な要素が必要とされています。



弁護士法第72条に違反した場合には、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処するとされています。


実際に刑事裁判となった際に、どの程度の刑が科されるかは事案により異なりますが、刑事裁判にならなかったとしても、今回ご紹介したケースのように弁護士法第72条に違反する契約は、民事上、公序良俗に違反するものとして無効とされ、不法行為を構成するものと判断されることになります。



弁護士法違反にあたらないとされたケース

売主建物の売却をするために、占有者との間で立ち退き交渉をしてほしいと依頼された仲介会社の従業員が、占有者と直接交渉を行い、立退料の支払いを条件に退去する合意を取り付け、売主より預かった立退料を占有者に交付し、任意退去させることに成功したものの、その後、売主の後見人となった弁護士から、弁護士資格がないのに売主の法的紛争事案に介入し損害を負わせた等として、損害賠償を求められた事案です。


この事案で、裁判所は、仲介会社には問題解決後、本件の建物の売却依頼までつなげたいとの思惑はあったものの、退去交渉に関する報酬は担当者個人としても仲介会社としても得ておらず、退去交渉は、弁護士法第72条の「報酬を得る目的」及び「業とする」の要件の充足を認めることができない等として、結論的に請求を棄却しました。


この事案では、裁判を経て、結果的に、「報酬を得る目的」や「業とする」の要件が欠けるとして、弁護士法第72条違反にならないと判断されましたが、弁護士法違反の指摘をされ、裁判を起こされること自体がリスクともいえますので、たとえ「報酬を得る目的」や「業とする」の要件が欠けると考えられる場合であっても慎重な対応が必要といえます。










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